「白内障は年をとったらなる病気」と考える人は少なくありません。確かに、高齢者に多く発症するイメージがある白内障ですが、昨今ではスマートフォン(以下「スマホ」)の普及や紫外線(UV)の影響によって、若い世代にも白内障が増えていると言われています。
実際に、日本国内外の研究では、長時間のデジタル機器使用が眼精疲労や視力低下を引き起こすだけでなく、眼の老化(加齢性変化)に似たダメージを早期に与えるリスクがあることが示唆されています。また、屋外活動時の紫外線を放置していると、水晶体がダメージを受けて白内障が進行する可能性も高まります。
本記事では、「若者 白内障 原因」につながりやすいスマホ利用と紫外線の2大要因に焦点を当て、具体的な対策法をわかりやすく解説します。さらに、国内外の論文や眼科の専門家が示すエビデンスを踏まえながら、どのように日常生活を見直すべきかをご紹介。早めに正しい知識を得て、目の健康を守りましょう。
白内障とその原因
まずは白内障そのものについて、基本的な定義や若い世代が注意すべきポイントを整理します。高齢者に多い印象の白内障ですが、生活習慣の変化に伴い若者でも見過ごせないリスク要因が潜んでいます。ここでは「白内障とは何か」、そして「なぜ若者でも油断できないか」を確認しましょう。
白内障とは
白内障(はくないしょう)とは、目の中にある“水晶体”と呼ばれる透明なレンズ部分が濁ってしまう病気です。私たちの目は、本来透明な水晶体を通して光を取り込み、網膜に映像を結ぶことで「見える」状態を維持しています。しかし水晶体が濁ると、光が十分に通り抜けなくなり、視界全体がかすんだり、ものがダブって見えたり、光をまぶしく感じたりする症状があらわれます。

若者でも油断できない理由
白内障は60代以上での発症が最も多いとされていますが、生活習慣の変化や紫外線ダメージの蓄積などにより、若年層でも見られるケースが増加しているとの報告があります。
特にスマホやタブレットなどのデジタルデバイスを常に使うライフスタイルが定着している20~40代は、従来の高齢発症と異なるメカニズムで水晶体に負担をかけている可能性が指摘されています。
たとえば、ブルーライトによる酸化ストレスや眼精疲労、まばたきの減少が招くドライアイなどが相乗的に働き、結果として白内障を発症・進行させやすい環境を作っている可能性があります。
スマホ使用の影響
1. 画面を長時間見ることで起こる眼精疲労
スマホをはじめとするデジタル機器は、私たちの日常生活に欠かせない存在となりました。しかし、その長時間使用が目に大きな負担を与えていることは多くの研究で示されています。眼精疲労が続くと、ピント調節の筋肉が疲弊し、水晶体にも影響を及ぼします。
2. まばたきの回数減少やブルーライトの負担
- まばたきの回数減少
画面に集中するほど、まばたきは減少し、目の表面が乾きやすくなります。ドライアイ状態が続けば、角膜や水晶体の保護が十分に行われず、傷つきやすくなるのです。 - ブルーライトの影響
スマホやPCから発せられるブルーライトは波長が短くエネルギーが強いため、網膜や水晶体に対して酸化ストレスを与えるといわれています。ブルーライトが直接的に白内障を引き起こすメカニズムはまだ解明途上ですが、スマホによる眼精疲労の主因になると言われ、その疲労が長期的に蓄積すると水晶体がダメージを受けやすい環境になる可能性があると考えられています。

紫外線が目に与えるダメージ
続いて、白内障の進行を加速させるもう一つの大きな要因である「紫外線(UV)」についてです。肌へのダメージは知られていますが、実は目への影響も深刻な場合があります。若い世代のうちからUVケアを意識することで、水晶体への蓄積的ダメージを抑えることが可能です。ここでは紫外線の種類や水晶体に及ぼす影響、そして日常的なUV対策を取り上げます。
UVと水晶体の関係
紫外線(Ultraviolet Ray, UV)には、大きくUV-A, UV-B, UV-Cの3種類がありますが、地上に届くのは主にUV-AとUV-Bです。これらの紫外線が肌だけでなく、眼にもダメージを与えることは広く知られています。
- 水晶体への蓄積的影響
紫外線を浴びると眼球表面や水晶体でフリーラジカル(活性酸素)が発生し、組織を酸化させるリスクが高まります。加齢性白内障では長年のUV曝露が進行要因のひとつと考えられていますが、若者であっても屋外で強い日差しを浴び続けるライフスタイルを送っている場合、同様の影響を受ける可能性が十分に考えられます。 - 日差しの強い季節や屋外活動時の注意
夏場の直射日光はもちろん、冬場のスキー場や海辺など、反射光が強い環境も要注意です。雪面や水面はUVを反射し、通常の2倍以上の紫外線を目に取り込んでしまうケースもあります。こうした環境でUV対策を怠れば、眼へのダメージは加速的に蓄積します。
紫外線量と若年発症のリスク
オーストラリアでは日差しが強い地域特有の白内障発症率が問題視されており、比較的若い年齢層でも軽度の白内障が見られる事例が増えています。屋外での強いUV曝露が長年続くと、加齢性と似たメカニズムで水晶体が酸化ストレスを受け、若くても発症リスクが高まる見解もあるようです。

日常での紫外線対策
1. サングラス・日傘・帽子の利用
最もシンプルかつ効果的なのが、物理的に紫外線を遮ることです。具体的には、以下のような対策がおすすめです。
- サングラス
UV400カットなど、紫外線を99%以上ブロックするレンズを選びましょう。色付きであってもUVカット加工がないと瞳孔が開き、逆に多くの紫外線を取り込む恐れがあります。 - 帽子や日傘
つばの広い帽子や日傘も有効です。特に夏の日差しが強い時間帯(午前10時~午後2時)や、海・山など反射光が多い場所では活用が必須です。
2. 室内でもカーテンやブラインドで紫外線を軽減
紫外線は屋外だけでなく、室内にも窓を通して入り込むことがあるため、長時間窓際にいる場合はカーテンやブラインドを閉め、UVカットフィルムを貼るなどの工夫が必要です。特にUV-Aはガラスを透過しやすい性質があるため、「室内でも安心」と油断しないようにしましょう。
ワンポイント:UV-AとUV-Bの違い
- UV-A(波長315-400nm):肌の奥まで届き、シワやたるみなどの原因になる。窓ガラスを通過しやすい。
- UV-B(波長280-315nm):肌や眼球表面で日焼けや炎症を起こしやすい。一部はオゾン層に吸収されるが、強いエネルギーを持つ。

若者が実践できる予防策
スマホ利用や紫外線対策とあわせて、若者が日常生活の中で取り入れやすい「白内障予防」のポイントを整理します。生活習慣をトータルに見直すことで、水晶体だけでなく目全体の健康力を高めることができるはずです。あなたの視力を長く守るために、すぐに実践できる工夫を取り入れてみましょう。
生活習慣の改善
白内障の発症や進行を抑えるうえで欠かせないのが、生活習慣全般の見直しです。スマホや紫外線といったピンポイントの要因だけに注目しがちですが、そもそも身体の健康が整っていれば、眼の回復力や抗酸化力も高まりやすくなります。
スマホ使用時間を減らす/休憩をこまめにとる
スマホやPCを連続して使用する場合、1時間に5~10分は画面から離れる休憩をはさみましょう。夜間はブルーライトカットモードや専用メガネを活用し、就寝1時間前にはなるべく画面を見ないように心がけてください。
バランスの良い食事
抗酸化作用のあるビタミンA・C・E、ルテイン、ゼアキサンチンなどを含む野菜(ニンジン、かぼちゃ、ほうれん草など)を積極的に摂取します。魚介類やナッツ類など、オメガ3脂肪酸を含む食品も有効と考えられています。
十分な睡眠
睡眠が不足すると、眼細胞の修復力が低下し、日中に受けたダメージを回復しきれません。夜更かしを減らし、最低でも6~7時間の睡眠を確保することで、白内障予防にもつながる可能性があります。
ストレス管理
ストレス過多は自律神経やホルモンバランスを乱し、眼精疲労の回復が期待されます。適度な運動や趣味、入浴などを習慣化してリラックスする時間を設けることが大切です。
学術的裏付け
栄養バランスの良い食事や十分な睡眠といった基本的な生活習慣の確立が、眼疾患の予防に有効と考えられていますが、具体的な因果関係の詳細は研究途上です。食事・睡眠・運動・ストレスケアを総合的に改善することで、白内障をはじめとするさまざまな目のトラブルを軽減する可能性が高いと示唆されています。

定期検診とセルフチェック
1. 目のかすみやまぶしさを放置しない
若者の白内障は進行がゆっくりの場合もあり、初期症状を疲れ目や乱視と勘違いしてしまうケースが多いです。しかし、下記のような兆候が数日~数週間続くなら、早めに眼科を受診しましょう。
- 文字がかすんで見え、画面に目を近づけるようになった
- 太陽光や照明がやたらとまぶしく感じる
- 目が乾きやすく、休んでもスッキリしない
- 視力が左右で大きく異なってきた
2. 定期検診 眼科のメリット
若い世代こそ年1回程度の眼科検診を習慣化することで、白内障の初期を見逃さずにすむメリットがあります。眼科では、視力検査に加えて細隙灯顕微鏡検査や眼底検査、必要に応じて超音波検査を行い、水晶体の混濁具合を詳しくチェックすることが可能です。
また、受診した際にスマホやUV対策などの生活習慣を相談すれば、専門的なアドバイスを受けられます。白内障以外にも緑内障や網膜疾患など、放置すると重大な視力低下を招く病気の発見にもつながるため、受診の意義は大きいでしょう。

まとめ・結論
スマホと紫外線は、若者の目に大きな負担をかけ得る2大要因です。どちらも現代社会では避けて通れない存在かもしれませんが、以下のような対策を講じることで、若者の白内障になるうる原因を大きく減らすことが可能です。
- スマホの使用時間を意識し、休憩をとる
1時間作業したら5~10分は目を休ませる
ブルーライトカットメガネやフィルムを活用する
- 紫外線対策を徹底する
サングラスや帽子、日傘でUVを遮断する
室内でもUVカット窓やフィルムを活用して紫外線をブロックする
- 生活習慣を総合的に見直す
栄養バランスの良い食事を摂る(ビタミン・抗酸化物質摂取)
十分な睡眠と適度な運動、ストレスマネジメントをする
- 定期検診で早期発見・早期対処
疲れ目やまぶしさを軽視せず、年1回でも眼科受診をする
異変を感じたら放置せず、専門医のアドバイスを仰ぐ
白内障というとシニア世代の病気だと思われがちですが、スマホや紫外線などの環境要因によって、意外なほど早い段階から水晶体にダメージが蓄積している可能性があります。今は何の自覚症状がなくても、将来の視力を守るためには「いかに早めに予防策を始めるか」が重要です。
日頃から目の健康を意識し、眼科への定期検診を習慣化することで、若い頃から白内障リスクをしっかりコントロールしていきましょう。
参考
日本眼科学会 白内障
日本眼科医会 デジタル機器により生じるる視機能の弊害
環境庁国立環境研究所 紫外線の増加がヒトの白内障発症に及ぼす影響に関する研究

読者へのメッセージ
スマホを見るときの姿勢や距離、照明や環境との兼ね合い、そして屋外での紫外線ケアは、どれも「少し意識を変えるだけ」で取り入れられる改善策ばかりです。ほんの些細な行動が、将来の目の健康を大きく左右すると考えると、今からの取り組みは決して無駄ではありません。
若い世代のうちから目を守る意識を高め、定期検診やセルフチェックを習慣にすれば、白内障のみならず緑内障や網膜疾患の早期発見にもつながります。
ぜひ今日から、スマホ利用や紫外線対策を改めて見直して、クリアな視界を長く維持できるように取り組んでみてください。もし違和感や不調を感じたら、自己判断せずに専門医に相談することが、あなたの目を守る良い対策となるでしょう。