緑内障は視神経が徐々に損なわれ、放置すると失明につながることがある進行性の眼疾患です(※1)。初期には自覚症状が乏しく、多くの方が気づかないうちに進行します。実は何気ない日常行為が緑内障の悪化につながっている可能性があるのです。

本記事では、エビデンスに基づいた情報をもとに、緑内障の進行を防ぐために「してはいけないこと」をわかりやすく解説します。生活習慣や治療継続の重要性を理解し、必要に応じて眼科医へ相談するきっかけにしてください。

緑内障悪化に影響する生活習慣とは

長時間うつむき姿勢や重い荷物を持ち上げる行為

頭部を長時間下げたり、重い荷物を持ち上げる行為には注意しましょう。一時的に眼圧の上がる可能性があります。眼圧上昇は緑内障悪化のリスク要因ですので、極端な前傾姿勢や重いものを持って息こらえるなどは避けることが望ましいです。

喫煙・過度な飲酒

喫煙は血管収縮を引き起こし、視神経への血流を低下させる可能性があります(※3)。一方、過度な飲酒は血行や血圧変動をもたらし、眼圧コントロールに影響するおそれがあります。これらの習慣はできるだけ控え、眼の健康を維持しましょう。

カフェイン・塩分の過剰摂取

カフェインには一時的に眼圧を上昇させる可能性が示唆されています(※4)。また、塩分過多は血圧上昇につながり、間接的に視神経への負担増となる可能性があります。過度な摂取を控え、バランスのとれた食生活を心がけることが大切です。

治療面で「してはいけないこと」

点眼薬・内服薬を自己判断で中断

緑内障治療は眼圧コントロールが主軸であり、点眼薬や内服薬の適切な継続が必須です。症状が落ち着いても、自己判断で中断すると視野欠損が進行する危険性があります。副作用や不安がある場合は、必ず担当医へ相談しましょう。

定期検診を怠る

緑内障は自覚症状が乏しく、進行度合いを自己判断することは困難です。定期的な眼科検診で眼圧・視野検査を受け、治療効果や進行状態を評価することが重要です。

民間療法やサプリへの過剰依存

民間療法やサプリには科学的根拠が不足しているものも多く、適切な治療時期を逃せば不可逆的な視神経ダメージを負うリスクがあります。サプリはあくまで補助的な存在であり、必ず医師の意見を優先してください。

【医師監修】緑内障で「してはいけないこと」とは?悪化を防ぐための生活習慣・行動ガイド

緑内障の症状を悪化させる可能性のある行動・環境

暗い部屋での長時間作業

暗い環境では瞳孔が拡大し、眼圧への影響が懸念されます。適度な明るさでデスクワークや読書を行い、目への負担を軽減しましょう。

ストレス過多・睡眠不足

ストレスや睡眠不足は自律神経のバランスを乱し、血流不良や眼圧不安定につながる可能性があります。規則正しい生活習慣を心がけ、ストレス軽減・十分な休息で全身的な健康を維持しましょう。

食べ物・飲み物で気を付けたいポイント

塩分・カフェイン・アルコール摂取量の見直し

一切禁止というわけではありませんが、塩分やカフェイン、アルコールの過剰摂取は控えめに。水分摂取は一度に大量ではなく、こまめな補給が勧められます。

抗酸化作用のある食品で視神経保護をサポート

緑黄色野菜、ベリー類、ナッツ類など、抗酸化作用が期待できる食品が視神経保護に良い影響を与える可能性が示唆されています(※6)。望ましくない習慣を「禁止」するだけでなく、良い習慣を積極的に取り入れることも大切です。

もし気になる行為や症状がある場合

見え方の変化や気になる習慣がある場合は、早めに眼科を受診しましょう。適切な検査によって現在の眼圧や視野状態が把握でき、症状に合った対策が講じられます。

まとめ

緑内障は一度傷ついた視神経を元に戻せない疾患です。そのため、生活習慣の見直しや治療方針の遵守が極めて重要となります。点眼薬の自己中断や定期検診の怠り、眼圧を上昇させる行為(うつむき姿勢、喫煙、過度な飲酒、カフェイン過剰摂取など)は避けてください。少しでも不安や疑問があれば、早めに眼科医に相談することで、将来の視力を守る一歩となります。

参考文献(エビデンス)
日本眼科学会「緑内障診療ガイドライン(第5版)
タバコ喫煙の視覚毒性
カフェインの人眼眼底末梢循環に及ぼす影響