多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術について

多焦点眼内レンズを用いた白内障手術

白内障手術と眼内レンズの進歩により、見え方の質(Quality of Vision)は向上してきました。そして、見え方の質を改善することで、生活の質(Quality of Life)がより高まります。

フェアウェイのゴルフボールがはっきり見える、テニスや卓球のボールがくっきりみえる、読書が楽しくなる、料理が美味しくなる、メークが綺麗にできるなど、趣味をより楽しむことができます。

ただ白内障治療の方法は、それぞれの眼の状態によって慎重に決定されなければいけません。白内障手術が必要であると診断されたら、仕事や趣味、一日の生活において遠く、近く、どこを見ることが一番多いのか、など、あなたの希望を伝え、あなたの生活に一番ふさわしい眼内レンズを選択されるようにおすすめします。

多焦点眼内レンズとは?

多焦点眼内レンズは、遠近両用レンズで、遠くと近くに、遠くと中間、そして、遠くと中間と近くにピントが合うように設計されているレンズです。

  • 読書やスマートフォーン使用などに適した「近方(40センチ)」
  • パソコンや料理などに適した「中間(60センチ)」
  • テレビ視聴や運転、ゴルフなどのスポーツに適した「遠方(1m以遠)」

遠くと近くも、あるいは遠くと中間も、そして、遠くと中間と近くが眼鏡なしでピントが合いやすくなります。当院で手術を受けられた方は眼鏡を使用せず生活を楽しんでおられる方が非常に多いです。

しかし、若い頃のように、見たいところに自在にピントを合わせられるわけではありません。また乱視が強い方は眼鏡が必要となることがあります。特に細かい文字を読んだり、暗い所で読書をする時、レストランのメニューを見る時など、眼鏡をかけた方がより楽な場合もあります。

それでもいくつもの眼鏡を使ったり、眼鏡をかけはずしすることから解放されます。眼鏡をかける頻度を減らしたい方、また事情により眼鏡やコンタクトレンズが使えない方に、よりふさわしいレンズです。

多焦点レンズの見え方

単焦点眼内レンズの特徴

一般的に白内障手術で使用されている眼内レンズは単焦点眼内レンズといい、遠くのみ、近くのみとある一定の距離にのみピントがあります。

白内障手術後はにごりがなくなるため、手術前と比べて見やすくなりますが、1つの距離にしかピントが合わないため、新聞も、景色も、遠近両方ともはっきり見える訳ではありません。ピントを遠くに合わせた場合、新聞を見るなど手元の作業はピントが合わないので、老眼鏡が必要になります。

  遠くのテレビにピントが合うが、パソコンや手元はぼけている

多焦点眼内レンズの種類

多焦点眼内レンズは、老視矯正レンズともいわれます。老視とは一般的に言われる老眼のことです。

多焦点眼内レンズには3種類種類があります。

遠くと近くにピントがあう多焦点眼内レンズ(2焦点眼内レンズ)

遠くと中間にピントがあう多焦点眼内レンズ(2焦点眼内レンズ)

遠くと中間と手元にピントがあう多焦点眼内レンズ(3焦点眼内レンズ)

最新の焦点拡張型レンズ(ビビティ)

多焦点眼内レンズ(2焦点眼内レンズ 遠近)

  • 読書やスマートフォーン使用などに適した「近方(40センチ)」
  • パソコンや料理などに適した「中間(60センチ)」
  • テレビ視聴や運転、ゴルフなどのスポーツに適した「遠方(1m以遠)」

多焦点眼内レンズ(2焦点型遠近)ではスマートフォンや読書、またテレビなどが肉眼で見やすくなりますが、中間距離(パソコンや車のナビ)などは眼鏡がないとみえにくくなります。

遠方のテレビと手元のスマホにピントが合っていますが、パソコンにはピントが合いません

多焦点眼内レンズ(2焦点眼内レンズ 遠中)

  • 読書やスマートフォーン使用などに適した「近方(40センチ)」
  • パソコンや料理などに適した「中間(60センチ)」
  • テレビ視聴や運転、ゴルフなどのスポーツに適した「遠方(1m以遠)」

多焦点眼内レンズ(2焦点型遠近)ではパソコンや車のナビ、そしてテレビや景色などが肉眼で見やすくなりますが、近く(読書)は眼鏡がないとみえにくくなります。

遠方のテレビと中間のパソコンにピントが合っていますが、手元のスマートフォンにはピントが合いません

多焦点眼内レンズ(3焦点眼内レンズ)

最新の3焦点眼内レンズ(パンオプティクス)は従来の多焦点レンズとは異なり、遠方と中間、そして近くでもピントが合うレンズです。

遠方・中間・近方にピントが合うことで、単焦点や2焦点眼内レンズに比べ、実生活における眼鏡への依存度が低減するといわれています。

  • より実生活での作業に適した遠方・中間・近方の見え方
    • 読書やスマートフォーン使用などに適した「近方(40センチ)」
    • パソコンや料理などに適した「中間(60センチ)」
    • テレビ視聴や運転、ゴルフなどのスポーツに適した「遠方(1m以遠)」にピントが合うように設計

遠方のテレビ、中間距離のパソコン、そして手元のスマホにもピントが合っています。

3焦点眼内レンズには現在2種類の選択肢があります。

1:パンオプティクス(panoptics)

2:シナジー

焦点拡張型レンズ(ビビティ)

4月より施設限定で使用が可能になったアルコン社の最新型の多焦点眼内レンズです。

特徴として、ハロー、グレア、スターバーストの出現が大変少ないことが挙げられます。

程度としては単焦点とほぼ同じと言われています。

これは夜間でも光がぼやけることがなく、はっきりとみえるということです。

そのため、夜間の運転をされる方には非常に適しています。

また従来の多焦点レンズが用いてきた回折という原理ではなく、最新のX-WAVEテクノロジーにより光のロスがなく非常に明るいレンズです

つまり、暗いところでも中間がより見えやすくなるということです。

また回折はおこりえるワクシービジョンとよばれる非常に薄いベールが掛かったような見え方が起こりません

圧倒的なクリア感を得ることができます。

距離としては遠方から中間までの連続した距離がはっきりみえ、また近くは実用的な視力を得ることができるレンズです。

詳しい説明はこちら

3焦点眼内レンズの選び方

当院では厚生労働省が許可したレンズのみ使用しています。

現在当院で選択可能なレンズは上記のパンオプティクス、シナジーの2種類となります。

選び方について

パンオプティクスの強み:夜の運転がしやすい(ハロ・グレアが少なめ)

パンオプティクスの弱み:手元が若干見えにくい

シナジーの強み:手元がより見えやすい

シナジーの弱み:夜の運転がしづらい(ハロ・グレアが強め)

ご自身のご希望と合うレンズの選択をおすすめいたします。

多焦点眼内レンズの弱点

多焦点レンズでの見え方には慣れることが必要です。また日々ものを見ることで脳が順応し、より鮮明に見えるようになります。脳が順応するには、年齢や個人差はありますが、遠くを見るための順応が1ヶ月、手元がはっきり見えてくるには3ヶ月程度かかります。

当院での手術を受けられた方は、比較的早期にはっきり見えるとおっしゃいます。また、暗い所では手元がはっきりとは見えません。その場合ライトで照らすなどの工夫が必要です。

多焦点眼内レンズのデメリットでよくおっしゃられるのが、夜間に街の電気や車のヘッドライトなどを見ると、 光が滲んだり眩しさを感じる場合があります。次第に慣れて眩しさも軽くなってきますが、特に手術後の数ヶ月は、夜間の車の運転等には特に注意が必要です。

白内障手術費用について
(多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術)

  • 2焦点(遠近)片眼・・・・・・・160,000円
  • 2焦点(遠中)片眼・・・・・・・240,000円
  • 3焦点(遠中近)片眼・・・・・・350,000円
  • 焦点拡張型多焦点眼内レンズ・・・350,000円

※ 多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は選定療養となり、通常の白内障手術に加えて上記料金が発生します。

白内障手術分は保険適応になりますが、追加の多焦点レンズ代が発生します。